世界20億人の金融難民救済に向けたDoreming事業について
先日、LondonのJETRO様より、Doremingの事業紹介と英国進出についてのインタビューを受けました。
世界20億人の金融難民を救済する当社の事業と信念に共感頂き、2016年10月4日付けのJETRO通商弘報で掲載頂きました。
(詳細については下記をご参照ください。)
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ドレミング、労働者向けフィンテックサービスで英国進出
-中堅・中小企業の欧州事業展開事例-
ロンドン発
2016年10月04日
ドレミング(本社:福岡県)は2月、日系フィンテック企業として初めて英国に進出した。独自に開発したシステムを「労働者に優しい会社」に無償で提供し、従業員が給与手取り額を上限に、銀行口座や現金を持たなくても買い物ができるサービスを提供する。10月からの本格的な事業展開を前に、同社のサービスと英国進出の経緯、英国のEU離脱への懸念について、代表取締役社長の高崎将絋氏に聞いた(9月5日)。
<「世界の貧困や格差の低減」が最終的な事業目標>
ドレミングが提供するのは、給与振込前に手取り額まで買い物の決済ができるサービスだ。従業員がタイムレコーダーで退勤打刻した瞬間に勤怠集計を行い、給与計算することで、勤務後すぐに給与の手取り額がわかる勤怠・給与管理システム(注1)をベースとしている。同社のサービスの特徴は、銀行口座を持たなくても利用できること。世界銀行によると、2015年時点で世界で約20億人が銀行口座を持っていないという。
このシステムを導入した企業の従業員が買い物をする場合、個人を特定する認証にはカードもしくはスマホアプリを使用し、モバイル決済を利用して代金を支払う。同社はモバイル決済企業と協業しており、退勤直後に判明している手取り給与額が買い物上限額となる。同社は店舗ごとに従業員が買い物した金額を集計し、振込伝票を作成して各企業とその取引銀行に通知すると、給与日に企業の銀行口座から店舗の銀行口座に振り込みが行われる。従業員の給与は買物で使った分を差し引いて支給される。
高崎社長は、途上国の労働者が「最初は『働けば食べられる』、次に『真面目に働けば収入が増える』を実感し、将来に希望が持てる社会にしたい」と語る。同社は「世界の貧困や格差の低減」「貧困層の中間所得層への引き上げ」を最終的な事業目標として掲げている。
同社は金利も手数料も従業員からは一切取らない方針だ。先進国でも近年、高金利の借金をして返済に苦しむ労働者や高額の手数料を要求される給料前借りローンなど、低収入労働者をさらに追い込む「貧困ビジネス」が社会問題になっている。そこで同社は、真面目な労働者が働いた分の手取り給与分をいち早く使えるような勤怠・給与管理システムを無償で「労働者に優しい会社」に提供することにした。労働者にとっては前借りの必要が減り、企業にとっては給与計算に係るコストを節減できるだけでなく、イメージや従業員の定着率の向上にもつながると説明する。
同社の収入源は店舗やレストラン、ホテルなどが負担する決済手数料で、デビットカードやクレジットカードと同じ収益モデルだ。ただし、これらカードの決済手数料と異なり、店舗の広告や販促情報を労働者の携帯電話やスマートフォンに告知し、顧客を店舗に誘導して受け取る手数料であり、店側にも納得して払ってもらえるという。
<難民の経済的自立につながると注目>
同社が英国進出を決めたきっかけは、2015年に米国サンフランシスコで開催されたベンチャー企業コンテスト「テッククランチディスラプト(Tech Crunch Disrupt)2015」に出展し、ビジネスモデルが評価されたことだ。同コンテストでは、英国、ドイツ、フィンランドなど欧州の企業や政府機関から、シリア難民などの早期経済的自立にもつながるなど、同社が想定していなかった評価が寄せられ、欧州でのサービスに需要があることが分かったという。
進出先を英国に決めたのは、ロンドンが欧州最大の金融センターで、フィンテック企業が続々と設立されていること、英国政府が同社の事業モデルを高く評価し、英国は中東、アフリカ地域と太いパイプを持っていると強く働き掛けられたからだという。
同社は2月に英国に法人を設立し(資本金35万ポンド)、3月10日には、英国のフィンテック業界のコンソーシアムであるイノベート・ファイナンスに日本企業として初めて入会が認められた。6月1日から入会申し込みが殺到しているフィンテック企業のインキュベート施設である「レベル39」(2016年4月14日記事参照)に入居が認められ、10月からは英国で採用したカントリーマネジャーの中村知彦氏、マイケル・ウン氏を加えた3人体制で本格的に事業活動を開始する。
「レベル39」が入る「ワン・カナダ・スクウェア」ビル (ドレミング提供)
<英国のEU離脱による不確実性を懸念>
同社が英国進出に当たって最も苦労したのは、銀行口座の開設だという。大手・中堅9行に口座開設を申し込んだものの、「スタートアップ企業には口座を開設しない」「最低でも200万ポンド以上の売り上げが必要」と門前払いを受けたり、膨大な数の書類や証明書を要求された揚げ句、提出しても反応がなかったという。ようやく大手行で口座開設にこぎ着けたが、各行に提出した書類の数や作業は日本の比でなく、政府や地元自治体が積極的に企業誘致活動をしている一方で、企業進出の前提となる銀行口座開設にこれほど苦労するのは理解できないし、進出を検討する日系企業には相当の準備や覚悟が必要だ、と高崎社長は話す。
同社にとって、もう1つ想定外だったのが、進出早々に英国がEU離脱を決定したことだ。短期的な影響は限定的だとしても、移民法が強化されビザ発給規制が厳しくなることを懸念する。
特に問題なのは「不確実性」だ。長期的に金融センターとしての地位が低下すればフィンテック市場や資金も縮小化の恐れがあるからだが、同社がその一翼を担うフィンテック産業は発展を続けており、スマートフォンのさらなる普及や人口知能の性能向上などで新たなサービスが拡大する見通しだ。さらに、欧州や英国が力を入れるオープンバンキング(注2)により銀行が独占してきた決済、入出金、融資判断などの派生サービスなどの分野にフィンテック企業が参入する余地は大きく、市場規模はさらに拡大するだろう、と高崎社長は語った。
3人の創設メンバー(左からマイケル・ウン氏、高崎将紘氏、中村知彦氏)(ドレミング提供)
(注1)ドレミングの勤怠・給与管理システムは、出資者で、高崎社長の父高崎義一氏が創立したキズナジャパン(本社:東京都)が開発した「my給」を応用したシステム。
(注2)EUは2015年に成立した第2次決済サービス指令(PSD2)で、各銀行が保有するデータと機能をアプリケーションプログラムインターフェース(API)を通じて公開することを義務付けている。
(岩井晴美)
通商弘報 058997744645b391
参照URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/10/058997744645b391.html
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